[航空交通管制のトップページ] [トップページ]


航空交通管制(航空管制)とは?



 いきなり、航空交通管制(航空管制)の役割を説明しても理解しにくいと思いますので、まずは皆さんに簡単なクイズを、差し上げましょう。
 

【問題1】
北海道にある「新千歳空港」から、九州にある「福岡空港」まで飛行したい場合、空はとても広いので、パイロットは自分の好きな高度、方向で飛行することができる。
○(マル)か×(バツ)か?

【問題2】
名古屋で自家用航空機を持っている人が、大阪までプライベートな用事で出かける時、距離はそれほど遠くないので、パイロットは、マイカーと同じ感覚で、自分の好きな時刻に勝手に離陸・出発しても良い。
○か×か?

【問題3】
約35,000フィート(=約10,000メートル)上空を飛行している航空機の乗客の一人が、急に心臓が苦しくなった。このような場合、パイロットの判断で、徐々に高度を下げ、現在地点から一番近い空港に緊急着陸して良い。
○か×か?

 では、答え合わせをしましょう。

  :
  :
  :
  :
  :
  :
  :
  :
  :
  :
  :

 実は全問【×(バツ)】が正解です。

 まず「問題1」についてですが、確かに、空はとても広いので、一見問題ないように思われるかもしれませんが、ところが、航空機は自動車などとは比較できない程の速いスピードで飛行している上に、さらに天候によっては雲の中を飛行しなければなりません。ですから目の前に「あっ!、相手の飛行機が見えた!!」という時点では空中衝突などといった大事故になる可能性があります。
 もちろん、このような事故を回避できるように航空機には相手の航空機や障害物を写し出す「レーダー」といったものを装備していますが、これだとパイロットはトイレに行く暇なしで、常にレーダーを見続けなければならず、とても現実的な方法ではありません。
 このため、とても広い空ではありますが、安全に航空機が運航できるように陸上の「道」に相当する「航空路(*1)」というものを設定し、航空機はこの航空路を外れて自由な場所を飛ぶことはできないことになっています。

 次に「問題2」についてですが、みなさんも空港へ行かれた時に感じることと思いますが、航空機のエンジンって、非常にうるさいですよね。もしこのうるさい航空機が、夜、寝静まったごろ、飛び交わされたら安眠妨害きわまりないことは想像がつくことと思います。
 よってこのような問題が起きないように、空港ごとに離陸・着陸できる時間帯というものが決められており、航空機は特別な場合を除いて、指定された時間帯以外は飛行承認が下りないことになっています。

 そして「問題3」については、「おいおい、これは緊急事態なんだから、パイロットの判断で構わないだろう!」と思われる方が多いかもしれませんが、問題1のところでも触れたように航空機はとても速いスピードで飛行している上に、自動車のような「前後左右」といった2次元的な要素の他に「上下」といった3次元的な要素になっています。そのため、自機の前方に航空機がいなくても、自機の上下には、他の航空機が飛行している可能性も大いにあります。よって、幾ら緊急事態といっても、パイロットが独自で高度や方向を変更すると、やはり空中衝突の危険性が伴います。また、一番近くの空港に緊急着陸といいましても、空港ごとに滑走路の長さや支援設備が異なりますので、それらの条件が一つでも満たされていなければ、いくら一番近くの空港であっても着陸の許可は下りません。
 よって今回のような場合でも、航空機はパイロットの判断で高度や進路の変更、さらに空港への緊急着陸はできないことになっています。

  :
  :
  :

 と言うことで、前振りが長くなりましたが、実はこれまでに紹介した事例以外にももっと多くの問題や約束事があるため、それらの約束事を円滑に遂行できるようにする必要があります。
 そこで、このような空の安全・秩序・円滑を維持することを目的として、地上からレーダー等で監視しながら飛行中の航空機に対して適切な指示・助言を行ったり、出発・到着の航空機に対して種々の指示・助言を行うことを「航空交通管制(*2)」といい、今日の航空機運航には欠くことのできない大切な仕事となっています。また、この航空交通 管制で航空機が管制されているお陰で、私たちは安心して航空機に乗ることができる訳です。

(*1)
 「航空路」は、世界各国で決められており、日本上空だけでも100本以上の航空路が存在します。(各航空会社の機内誌の巻末ページ付近の日本地図に赤い線がいっぱい引かれた図が載っていることがありますが、あの赤い線が、ずばり「航空路」なのです。)


(*2)
 「航空交通管制」は、英語では「Air Traffic Control(エア・トラフィック・コントロール)」といい、これを略して「ATC(エイティシー)」と呼ばれています。また「航空交通管制」も略して「航空管制」と呼ぶことがあります。

[航空交通管制のトップページ] 

[トップページ]